離婚に際し、その条件としては主に以下の「慰謝料」「財産分与」
「親権」「養育費」について夫婦で協議して話し合うことになります。
なお、できれば話し合いの際には、穏便に無理のない内容で進めるのがスムーズに進める要諦ではありますが、配偶者に不貞があったり、
ドメスティックバイオレンス、パワハラ、モラハラ、金銭問題などが絡むとどうしても感情的になりますので、夫婦間での話し合いは難しくなって、
弁護士さんを立てたり、離婚調停を申し立てて、その中で条件を突き合わせて、話し合いで落としどころを探っていくことになります。
慰謝料について
離婚における慰謝料とは、離婚原因を作った側(私どものケースでは浮気・不貞をした者)が、苦痛を受けた側(依頼者)に支払う損害賠償金のことを指します。
慰謝料請求をできる場合とできない場合
慰謝料を請求して金銭が支払われるのは、暴力、精神的虐待、不貞行為など明らかに一方に非がある場合のほか、浪費、過度の借金、性交渉の拒否、過度の宗教活動、
病気の隠蔽、犯罪を犯すなど理由は様々ありますが、私どもの探偵事務所であつかう不貞行為はこの中に入ります。
逆に慰謝料を請求しても金銭を支払われないものは、婚姻関係はすでに破綻しているが、その原因が夫婦双方にあるような場合や、
どちらに婚姻破綻の原因があるとはっきり言えない場合、また離婚に至る原因を作った本人が慰謝料を請求した場合などがあります。
よく調停などで、不貞の証拠に反論して、依頼者側の落ち度や夫婦生活内でのあることないことを羅列するような対象者(私たちの仕事でいう)の姿を見聞きしますが、
どうも見苦しく思えます。
慰謝料の相場
慰謝料にはとくに相場というものはないようにいわれており、請求額も基本的には規定はありません。
その金額は、離婚の原因と内容、夫婦の収入、資産状況などによって決定されるようですが、基本的に不法行為による損害賠償請求なわけですので、
夫婦のどちらか一方に離婚の原因(有責行為)があった場合には、慰謝料の金額に、この有責の割合が影響するとされています。
私どもでよくある離婚のケースでは、30才代の夫婦で夫に不貞行為があって離婚する場合、結婚10年、子供2人、夫の年収500万円、
妻パートなどのような平均的な家庭状況で、100~400万円くらいが多く、夫に支払い能力があることが前提の場合がほとんどです。
ただ、支払う現金がないような場合、持ち家や車などで代替するケースも良く聞きます。余談ですが、アメリカのハリケーンの名称に女性の名前が使われるようになったのは、
離婚の嵐が吹き荒れると、妻は家と車を持っていくからなどとも聞きましたが、家と車を譲ると、ある程度納得してもらえるということなのでしょうか…。
慰謝料=手切れ金?
浮気調査をして、離婚の話し合いに入った後に、浮気をしていた夫が、浮気相手にせっつかれ、
婚姻を迫られているような場合やそのことに大いなる責任を感じているような場合、また、浮気相手の女性に慰謝料請求をされたくない場合などに、
離婚したい依頼者にとってはとても都合よく、「お金で済むのなら」と気前よく慰謝料を支払うケースもよく耳にいたします。
恐らくこれは手切れ金の意味も含め、以後の生活を安定させようとしてのことだと思うのですが、お金で将来の安定を買う方もいるようです。
離婚してからお金のことをやいやい言われるのがいやなのか、思っていた以上に支払う方もいるようですので、人の心理を利用するのも慰謝料請求には大事なことだと思います。
慰謝料請求の方法
近年はインターネットの普及もあって、「慰謝料請求マニュアル」や行政書士の方による内容証明の書き方のWEBサイトなどで、
慰謝料請求の方法などの情報があって、私どもでご相談を受ける方の中にも「安く慰謝料請求ができるようなので」という理由で、
内容証明の書き方マニュアル的なものを買って、自分で慰謝料請求される方がいらっしゃいます。
別に悪いことではないと思いますが、一昔前なら内容証明を送られるだけでもちょっとした脅威があって、一定の効果が出たのでしょうけど、
情報が氾濫している昨今は、当人が内容証明を送っても、あまり脅威に感じられないことが多かったりすると聞きますので、
そうなると慰謝料を請求しても支払われないことになったりする可能性も考えられます。
また、先々のことも考えて、請求先にそれなりに支払い能力があって、きっちりと請求しようと思えば、やはり弁護士をたてて請求をした方が効果があるのではないかと、
私は個人的に思います。
財産分与について
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦の協力によって共同で築いた財産を分配することをいます。
財産分与についての注意点
この財産分与については「財産」と名前がついているだけで、ほとんどの方がプラスの財産だけを考えて、マイナスの財産を考えておられないケースがよくあります。
特に結婚10年前後のお若い夫婦の場合は、プラスの財産よりマイナスの財産(家のローンや車のローンなど)の方が多い方が圧倒的に多いようで、
必ずしも離婚した際の財産分与でまとまったお金が手にできるというものではないということを念頭において考えないと、離婚をしたものの、
先の人生に不安を残すようでは路頭に迷いかねません。
ですので、差しあたって、ご自身の夫婦間にどのような財産があるのか、または、あると考えられるのかということを、まずは初めに整理する必要があると思います。
大変下世話なお話ですが、要するに「取れる財産」または「取られる財産」があってこその財産分与であると考えた方が、損はなくなると、私は個人的に思います。
財産分与の対象財産
財産分与の対象になる財産は、婚姻期間中に夫婦の協力によって築いた財産で、夫婦が協力して築いたもの全てが対象になると考えられます。
そのほとんどは、不動産や預貯金、株式などが金額の大きなものが分配の中心になりますが、ただし、婚姻前から個人で所有していた財産については、
財産分与の対象になりませんし、また、婚姻期間中に相続したり、贈与を受けた財産についても対象外になりますので、注意してください。
財産分与の対象になる財産
・ 不動産(土地や建物)
・ 動産(家財道具、自家用車など)
・ 現金、預貯金、有価証券、投資信託
・ 退職金、年金、生命保険金
・ 会員権(ゴルフ場、リゾート施設など)
・ 債務(例えば持ち家のローンなど)
・ 個人経営の会社の財産(認められる場合がある)
財産分与の対象にならない財産
・ 結婚前から個人ですでに所有していた財産
・ 結婚前にすでに与えられた財産、家財道具
・ 婚姻後の相続財産、贈与財産
・ 衣類など個人で使用する日常品
・ 会社(法人)の財産
財産分与の種類
財産分与の種類は、法的な性質によって以下のように考えられています。
清算的財産分与
清算的財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産を夫婦二人で分配することで、財産の名義や権利が夫や妻のどちらか一方のものになっていたとしても、
財産を築くには夫婦の協力があったと考えられて、裁判などでは貢献度の割合によって、財産を分配する方法が採用されることになります。
扶養的財産分与
扶養的財産分与とは、離婚によって夫婦の一方が経済的に不利になる場合に、扶養的な財産分与を行うことです。
やはりこの場合、女性の方が経済的に不利になる場合が多く、専業主婦だった妻がすぐには職に就けない場合などに、夫は妻の経済的な自立のメドがたつまで、
生活を保障しなければならず、財産分与や慰謝料を請求できない場合や、また、清算的財産分与や慰謝料が少額で生活を維持できない場合も含まれます。
慰謝料的財産分与
慰謝料的財産分与とは、財産分与と慰謝料を区別しないで金銭の請求や支払いを行うことですが、本来の財産分与は、清算的財産分与の意味合いが強く、
有責配偶者が金銭を支払う慰謝料とは異なりますが、実際は財産分与の支払い額を決定する際に、慰謝料を考慮することが多くあって、
最高裁判所でも財産分与に離婚による慰謝料を含めることを認めています。
しかしながらこれについては、過日に財産分与と別に慰謝料を請求する際などにトラブルになるケースもありますので、「慰謝料を含んだ財産分与」なのか、
「慰謝料を含まない財産分与なのか」という点は明確にしておくべきだと思います。仮に財産分与の中に慰謝料相当が十分反映されている場合は、
別に慰謝料を請求することができませんので、要注意です。
親権について
通常、婚姻中は子供が成人に達するまでは、夫婦が共に子供の親権者となりますが、離婚をするとその後は、夫婦が共に親権者となることはできないために、
夫婦のどちらか一方が親権者となり、協議離婚の場合で、未成年の子供がいる場合は、親権者を決めなければ離婚届は受理されません。
親権者
親権者とは、子供の身上監護権と財産管理権を持つ人のことをいい、身上監護権は、子供の養育や教育を行い、子供を保護する責任を負い、
財産管理権は、子供の財産を管理して、法的手続きの代理を行う権利と義務を負います。
親権者の法的要素
この親権については、若い夫婦で小さい子供がいる場合は結構もめることが多く見受けられます。
場合によっては夫婦お互いの両親も巻き込んでの争奪戦みたいな状況にもなることがあるようで、
数年前にはどちらかの元で生活している小学生の子供を通学経路で待ち伏せて、半ば誘拐のような形で連れて行くというようなケースもありました。
ただ、調停や裁判ではほとんどの場合、母親側に親権が認められると聞きますが、別居した時点でどちらが子供を連れて生活しているかが一つのポイントにもなるとも聞きます。
身上監護権
・ 居住指定権
・ 懲戒権
・ 職業許可権
・ 教育権
財産管理権
・ 契約の同意権
・ 契約の取消権
・ 法定代理権
親権者の決定
親権者の決定は、夫婦の話し合いで行われれば良いのですが、夫婦のどちらか一方の原因で離婚するような場合は、
当然冷静な話し合いなどできないケースがほとんどですので、親権を奪い合うことになり、話し合いで決められない場合は、
家庭裁判所に申立てを行い、調停か或いは裁判で親権者を決定します。
私どもでお聞きするお話しでは、調停離婚の際に親権の決定も同時に申し立てることが比較的多いようで、夫婦双方で離婚の合意ができている場合は、
親権者の決定のみを調停に申立てる方もいます。
裁判所で子供の親権者を決定する際に、決定の基準となっているのは、どちらの親を親権者に定めた方が子供の利益になり、
以後の子供の福祉に良いかということで、具体的には以下のようなことが考慮されているようです。
親の監護能力、心身の健康状態
私どもが聞く限りでも、監護能力がなくて病弱な方でも将来のために子供の親権を主張する親もあります。
親の居住、家庭、教育環境
離婚後のこれらの環境が整ってないと、この親が親権者に決定した場合、子供は大変な苦労をすることになります。
子供に対する愛情と養育の意欲
婚姻中は子供のことなど見向きもせず、養育する気もないのに、ただただ嫌がらせ的な意味合いや、
自身が寂しいからというようなことから親権を主張する方もいるようです。
親権者の経済状況
親権者の経済状況は、経済的に夫、妻のどちらの親が収入が多いかということを比較されるのではなくて、親権者に定職があり、
親と子が生活をするために不自由しない収入があるかどうかが審査され、この経済状況の審査には、定職がなくて収入が少ない場合でも、
親権者の両親や兄弟、親族などと同居して援助が受けられる場合や、一方の親からの養育費の金額などが考慮されるようです。
子供の年令と意思
親権者の決定には、子供の年令が影響するとされており、子供の年令が10才歳未満の場合は、
子供の衣食住の世話が必要なこともあって母親に親権が認められる傾向が強いようで、15才前後では子供の発育状況や子供の意思を尊重して親権者を決定し、
15才以上の場合には、子供に判断をさせることが多いと聞きます。
子供の居住環境、適応性
例えば離婚した後に、それまで家族と暮らしていた土地を離れ、他府県にある母親の実家に転居するような場合や海外に転居しなければならない場合など、
子供が馴染めないようなことがあったりしますので、これも考慮されるようです。
親権を分け合う
子供が複数いる場合に、夫婦で子供の親権を分けることは、法的に問題はありませんが、調停か裁判では、
夫婦のどちらか一方が子供全員の親権者となることが原則とされています。
特に子供の年令が低いような場合は、子供たちを分けることで子供の成長に悪影響を与えてしまうことが懸念されると考えられているからですが、
子供がある程度の年令に達している場合や、やむを得ない事情がある場合は、親権を分けることができます。
しかし、たまにテレビ番組で、数十年前に何かの事情で離れ離れになった兄弟が再開するような企画を見ますが、とてもいたたまれなくて、
余程の事情がない限り、兄弟は一緒にいるのがいいと私個人としては思います。
子連れで別居している場合
離婚前にすでに子供を連れて別居し、その別居期間が長い場合は、子供が別居後の生活に順応していると考えられ、
子供と生活をしている親の方に親権が認められることが多いと聞きます。
母親が妊娠している場合
妊娠中の母親が離婚した場合は、子供の親権者は母親になりますが、出産後に親同士で話し合って、父親を子供の親権者に変更することも可能です。
養育費について
子供を養い育てるためには、子供の衣食住、教育費、医療費など、多くの費用がかかりますが、
この子供を養い育てていくために必要な費用のことを養育費といいます。
離婚によって夫婦の法的関係は解消されますが、親と子の関係は当然生涯継続し、親は子供が成人になるまで子供を扶養する義務が存在することは、
夫婦お互いが当然認識しておくべきことです。
子供と生活を共にしている方の親は、その生活費や教育費を自分の収入の中から負担し、子供と生活を共にしていない方の親も子供と毎日会わなくとも、
子供の養育費を分担する義務がありますので、養育費とは、離婚した配偶者に支払うのではなく、
自分の子供に支払うということをよく認識していただくことが大事です。
よく、離婚した夫がちゃんと収入があるにもかかわらず、子供と会わせてくれないからとか、離婚したので関係ないなどといって、
養育費を支払わないケースのご相談をお受けしますが、基本的にこのような考え方は通りません。
この養育費の支払い額や期間方法については、夫婦で話し合って決めるのが理想的ですが…。
養育費の支払額
今現在、子供を養育しているのにいくら費用がかかり、今後、子供が成長していく過程でいくら必要になるのかなど、子供の将来に必要なお金を夫婦で検討し、
夫婦の共有する財産や夫婦の今後の収入はどれくらい見込めるかなども検討に加え、最終的な支払額を算出すればいいのですが、離婚を目前にして、
なかなか冷静にお金のやり取りをできるケースは少ないです。
それは夫婦間で利害関係が相反するものになるため、夫の収入が主になる家計の場合は、夫は払いたくないし、妻は払って欲しいとなるからです。
ご相談者の中に、色々な離婚サイトなんかの情報を見て、「話し合いましょう」「検討しましょう」などと記載されているのを見て、
「どうやって話し合えばいいのですか?」と私どもに聞かれることがありますが、これはごもっともなお話しで、
話し合えるような状態なら何も色々な情報を検索して悩む必要はありませんから、話し合うことが難しいという前提で考えた方が、
先で揉めたときの対処法を用意できるのではないかと思います。
養育費の支払い期間
今までにお話しを聞く限り、親の学歴や子供の学歴、年令によって設定することが多いようです。具体的には両親ともに大学卒であれば22才まで、
高校卒であれば18才と設定しますので、明確な期間を設定するようにしましょう。
養育費の支払い方法
月額単位で月々支払う方法と一時金として支払う方法がありますが、日本においては、そのほとんどの夫婦が月額単位の支払い方法を選択しています。
ただ、養育費の支払いが、きちんと定められた金額通り支払われているかというと、実際は半分にも満たないようで、
その支払いがきちんと行われていないようです。
養育費を確実に支払ってもらうには、夫婦間の約束を公正証書にして作成し、書面に残しておくことが大事で、調停や審判を利用すれば、
調停調書、審判書に養育費についても記載がされるため、不払いが続いた場合の強制執行の手続きが容易にできるようになりました。
また、一時金として受け取る方が良い場合としては、支払い義務者の収入が不安定で、将来まで養育費を受け取ることに不安を感じる場合、
一時金による支払いの請求をした方が良いときもあります。
色々なケースの離婚がありますが、先々まで遺恨のある配偶者にお金をもらうのが嫌だとか、配偶者の仕事が将来の見込みがないとかいったようなとき、
月割りの合計よりも多少少ない一時金で受け取って、後は自分で努力するという気骨のある方もいますが、ご自身が納得できる方を選ぶのが良いと思います。
養育費の金額変更
この養育費には、他の慰謝料や財産分与のように請求することに対する期限が設定されていないため、いつでも話し合いにより分担額を訂正することもできますので、
例えば子供が費用のかかる学校に進学したとか、医療負担が大きな大病にかかったとかいう場合、養育費の見直しと追加請求を行います。
それらの事情により養育費の増額、減額のどちらも起こりうることなので、夫婦間の話し合いで解決しない場合は、少し面倒ではありますが、
家庭裁判所に申し立てを行うのが良いのではないかと思います。
養育費減額にかかる素行調査
養育費関連資料
養育費にかかる関連資料です。ご参考にしてください。養育費算定表
*典型的(子供2人・0~14才)なケースの算定表です。詳細は以下の裁判所のWEBサイトをご参照ください。
平成30年度司法研究(養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について